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【土曜に考える】上海旅行記

先週末は上海に行ってきました。

中国経済に関する暗いニュースが続きますが、上海は相変わらずの活気でした。

上海 南京路歩行街

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この写真を撮ったのは結構遅い時間でしたが、まだまだ街中にたくさんの人がいます。

 

西洋風の建築物が並ぶ外灘界隈 

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外灘から見た対岸の陸家嘴 

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川があって、後ろをみれば外灘の風景、対岸にはアジアを代表する金融センターが構えているとあって、外灘界隈は中国内陸からの観光客や欧米からの観光客が多く、毎晩深夜まで賑わっていました。さすが中国第一の都市といったところですね。

 

さて、今回は上海の街中だけでなく最近開発されたニュータウンも歩きまわって見てきました。不動産バブルはまだまだ続いているようです。

土日に街中を歩けば、ラフな格好の現地人の中でひときわ目立つスーツ集団がうろうろしています。近づいて見てみると、不動産の仲介業者でした。まだまだ開発ラッシュは続いていて、売り物には困っていないようです。

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今の為替レートで1元=17円前後ですので、例えば400万元の物件は6,800万円となります。日本ではそこそこの高額物件になりますが、一等地にある物件ではありません。上海の中心から東側に離れたニュータウンの物件です。

 

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こんなホワイトボードを持って街中で営業をしているため、時には警備隊と衝突することもあるそうです。通常は看板を取り上げられるだけですが、何かの勢いで集団乱闘に発展してしまうこともあるそうです。

販売中のマンション

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100㎡超えの物件とみると価格もそんなものかなとも思いますが、実際の質感を見るとやはり日本の建築の品質には大きく劣ります。

上海のマンション開発で面白い点は、資本力があって役所と良好な関係を築いているデベロッパーに膨大な土地を一気に渡してしまうところにあります。デベロッパーは購入した土地(正確には借地権を購入した土地)を一体として複数棟のマンション、テラスハウス、そしてそれらの住居を囲う庭園を開発することができます。物自体の品質はがっかりする部分もありますが、開発のダイナミズムはさすがといったところです。

 

過去20年近くに渡って中国は急成長を続け、富豪がたくさん生まれました。日本ではここ数年の爆買いが話題になり、ようやく中国にお金持ちがいっぱいいるようだと気づき始めましたが、実はもっと前から富裕層は増えていました。

 

現地の人に話を聞いてみると、中国の富裕層には2種類いるそうです。起業家と動遷戸です。

起業家は日本でイメージするものとほとんど一緒です。世界の工場として成長する経済の波に乗って自ら会社を立ち上げた人達です。国全体の経済が凄まじい勢いで発展していますので、そこに上手く乗れればあっという間に億万長者の仲間入りです。この人達は自らリスクをとる度胸と中国のドロドロとした政治環境の中で良好な人間関係を作る知性を兼ね備えた人達です。その過程で事業を発展させるために努力し、必要な知識を学んできた人達です。

こういう人達が作った企業が世界で勝負できる企業となり、今後の中国経済を引っ張っていくことを期待したいところですが、残念ながらそうなれる企業はごくわずかでしょう。ほとんどの企業はその労力の大半を人間関係の構築に当てており、実際の技術発展にあまり力を注いでいません。加えて、創業してからしばらくして官僚とさらに仲を深めるためのキャッシュができると、政府の保証付きで銀行から用途不問の借金ができるようになります。こうなってしまうと、たいていの業種にとっては本業よりもガンガン値上がりしている不動産を取引したほうが儲かるようになります。設備投資の大半を不動産が占めるようになり、そうして本業が衰退して行ったのが今問題となっているゾンビ企業です。

 

同じことは個人にも起きました。もともと農家だったり町工場をしていたり、中国経済がまだ発展する前に土地の借地権を持っている人達がいました。そこにある日突然官僚がきて「ここを開発地域に指定するので、土地を取り上げる。その代わり新しい住居と多額の補償金をあげよう。」と言われます。その日暮らしをしていた人達が急に手元に多くのキャッシュを持つようになります。果たしてなんでこんなにお金が手に入ったんだろうと振り返ってみると不動産を持っていたからだという結論になります。さてじゃあこのお金を何に使おうかと考えた時、自然と不動産を買おうという発想になります。「だってまた地上げをしてもらうか、価格が上がった時に売ればまたお金が手に入る」と考えるわけです。

 

この期待の膨張が市場価格に反映されて、実際に上海の不動産価格は上がり続けています。その勢いは凄まじく、たいていの実業において得られる利益をはるかに超える利益を不動産売買によって得ることができます。

お金を手にした個人も企業も不動産取引に夢中になり、気づけば実体経済は成長どころかすでにシュリンクしています。それはGDPの成長以上に債務の増加が速いペースで進んでいることからも分かります。

 

去年のチャイナショックの株式市場の動きを見て、中国経済はすでにミンスキーモーメントに入ったと思いましたが、不動産市場について言うならばまだ資産価格の急落は始まっていません。それでももう短ければ3年、長くとも10年は持たないところまできていると思います。

世界の消費の3割を占める経済体がクラッシュすれば、世界経済への打撃は免れません。その時世界がどう動くのか、ダイナミックに変わるであろうこの隣人から目が離せないですね。