○一は全・全は一●

マーケット分析、投資手法の紹介記事がメインです。投資に関する意見や質問はお気軽にコメントください。ブログ紹介:http://skoumei.hatenablog.com/entry/2016/04/30/173822

2.株のリストはこう作る

Contents

  1. オニールのCAN-SLIM
  2. Current earnings
  3. Annual earnings
  4. New product or service
  5. Supply and demand
  6. Leader or laggard
  7. Institutional sponsorship
  8. Market
  9. まとめ・僕が実践しているリスト作り

 

投資を始めた時,初心者が最初に苦戦するのがこの銘柄選択の方法ではないでしょうか.日本企業だけでも上場企業数は3,500社を超えています.

この中から自分が取引をする銘柄をどう選ぶのか,その方法は人によって異なります.もしどうしたらいいか分からないようでしたらまずは僕の方法を参考に取り組んで見てください.

 

1.オニールのCAN-SLIM

僕の銘柄選択法の1つはウィリアム・オニールが提唱しているCAN-SLIMという方法です.これは下記の単語のそれぞれの頭文字をとった造語です.

 

C:Current earnings(当四半期業績がいいのか)

A:Annual earnings(通年の業績がいいのか)

N:New product or service(新商品・サービスを出しているか)

S:Supply and demand(銘柄の需給関係がいいか)

L:Leader or laggard(先導株か出遅株か)

I :Institutional sponsorship(機関投資家の態度)

M: Market(相場全体のトレンド)

 上記の項目を上から1つずつ見ていき,合格したら次の項目に移ります.

 それぞれについて少し説明を加えます.

 

2.Current earnings

ある企業に注目した時,まずは最新の四半期ごとの成長率を見みます.

過去に5倍〜10倍あるいはもっと大きな株価の成長を見せた銘柄のほとんどは,株価が急騰する前に業績が爆発的な成長を遂げています.

 

オニールのルールに従えば,当四半期のEPSの成長は前年同期比で少なくとも25%以上の成長率を記録していなければなりません.

 

ただし,注意点が2つあります.

1つ目はオニールは急成長時代にあったアメリカのマーケットを研究してこのルールを作ったということです.実際に調べてみれば日本でも前年同期比でEPSが25%以上成長している企業はありますが,他のルールと重ね合わせた時に,投資対象がほとんどなくなります.

僕は利益が18%以上の成長を示しているならとりあえず,合格としています.

ただし,売上も前年同期比で15%以上の成長を記録しているかをみます.いくら利益が成長していても,その要因が世の中に求められているからではなく,社員のリストラなどによって利益を出しているのであれば企業が爆発的に成長しているとは言えません.

 

2つ目は四半期ごとの業績を見るという事です.

企業が三ヶ月ごとに発表する決算短信は累積された業績です.つまり第一四半期の決算発表では三ヶ月の業績を発表しますが,第二四半期の決算発表は第一四半期と第二四半期が合わさった六ヶ月間の業績を発表しています.

今,ある企業が第二四半期の決算発表をしたとしたら,その直近三ヶ月分(四半期ごと)の業績を知るには発表される数字をそのまま使う事はできません.第二四半期の決算から第一四半期の決算の数字を引き算して直近三ヶ月の業績を求めます.

 

例えば,ある企業が下記の決算を発表したとします.

     第一四半期  第二四半期

売 上  1,000     2,500

純利益     100        230

  

第二四半期だけの業績を求めたかったら,下記の計算をしてください.

売上  2,500-1,000=1,500

利益     230-100=   130 

こうして求められた数字で前年同期比を計算してください.

 

3.Annual earnings

直近の業績が伸びているかという課題をクリアしたら次は年間の業績の伸びです.

ここでもオニールは年間EPSが前年比で25%以上増加している銘柄を選ぶ事をルールとしています.また,年間業績の成長は昨年だけではなく,過去3年間に安定して成長している事を求めています.

加えてオニールはROEが高い事も投資条件の1つとしています.17%以上ROEを記録していなければなりません.

 

このルールは四半期業績ほど注意点はありませんが,僕が用いる時は若干の下方修正を加えています.僕は過去3年の平均で売上15%以上,利益18%以上成長していて,ROE15%以上であればとりあえず合格としています.

加えていうならば,過去3年間において,売上と利益の前年比成長率がどんどん拡大しているならばなお積極的になります.例えば,過去3年間の利益成長率が15%,20%,30%といったケースです.

 

4.New product or service

この項目は企業の成長の要因を探る項目です.直近の四半期でも,過去数年間の業績でも成長が確認できているわけですから,成長中の企業だという事は既に分かっています.

ただ,なぜ成長しているのかはまだ分かりません.

実際に仕事をしていれば身をもって経験する事だと思いますが,特に会社の戦略がよかったわけでもなく,高い品質の製品を出したわけでもなく,ただただ景気が拡大サイクルに入ったタイミングだったというだけで売上も利益も伸びる会社は山ほどあります.

実力が伴っていないのに,環境がよかったというだけで業績がよくなっている企業を排除するために,この項目でしっかりと成長の原因を探りましょう.

 

オニールのルールに従えば,新商品や新サービスを出していて,顧客から熱烈に支持されている会社の株を買いなさいという事になります.

 

昔を振り返れば,電気や電話,カメラ,蓄音機,冷蔵庫,テレビ,コンピューターと新しい製品はいつの時代も現れています.

比較的新しい事例を挙げるならば,iPhoneを世の中に出したApple検索エンジンのAlphabet,ビジネスSNSのLinkedin,オンライン動画コンテンツのNetflix,高品質ハンバーガーショップのShake Shackなどがあります.

 

アメリカの企業ばかりじゃないかって?

日本でも素晴らしい商品やサービスを出した企業はたくさんありますよ.

MixiGreeDeNA・・・株式市場でとびっきり有名になったのはパズドラのガンホーですね.最近で言えば,子供に大人気の妖怪ウォッチを開発しているレベルファイブは素晴らしい新商品を出していると言えます.(レベルファイブは上場していないのが残念ですが・・・)

 

この項目の注意点を挙げるならば,B2CばかりではなくB2Bビジネスにも目を向ける事です.

例えばエムスリーという会社があります.この会社はインターネットを利用して医師と病院のマッチングや医師同士の情報交換をサポートしている会社です.創業してからたった7年で東証一部に上場し,株価は右肩上がりです.

 

日常生活ではなかなか接する事のない企業ではありますが,消費市場が日本のGDPに占める割合が6割,つまり4割はそれ以外だという事を考えると,B2Bビジネスも決して無視できない市場です.そのマーケットで成長する企業にもぜひ目を向けましょう.

 

5.Supply and demand

この項目はある株の需給のバランスを見る項目です.オニールのルールを簡単に言うと,他の条件が同じならば発行済株式数が少ない方の銘柄を買うべきだという事です.もう少し条件を加えるならば,公開市場で自社株買いをしていて,経営陣が自社株をたくさん持っている銘柄の方が望ましいです.

 

これまでの条件みたいに,具体的な数値を示す事はできません.ただ,大型株ばかりではなく,名前を聞いた事もないような中小型株にも目を向ける事を忘れないようにした方がいいでしょう.アベノミクスの影響でマザーズ市場で5倍〜10倍になっている銘柄がある中,トヨタの株しか買わないのはもったいないという事です.

 

6.Leader or laggard

マーケットは常に大きな循環を繰り返しています.景気拡大がしばらく続けば,一定期間の景気縮小期へと入ります.そしてその後また景気拡大期に入る.

マーケットが新たに上昇期に入る時,常にマーケットを引っ張っているリーダーが存在しています.それは時にはそれまでにあまり名前も聞いた事がないような企業だったりします.

 

日本のバブル期には不動産セクターがマーケットリーダーでした.関連して銀行株も上がっていましたね.バブル期だからほとんどの銘柄が上昇していましたが,その中でもとりわけ不動産が強い動きをしていました.

2000年頃のドットコムバブルではマーケットのリーダーはネット企業でした.〇〇ドットコムとつけばなんでも上がるようなマーケットとなっていました.

その他にも金融株,バイオ株,ネットゲーム株,ビットコイン,などバブルと呼ばれるものが存在しています.

 

マーケットが新しい上昇トレンドに入った時,オニールのルールによれば,その上昇を先導しているリーダー株を買うべきです.テーマとなっているセクター内でも上位3位以内の銘柄を買うほうがいいです.

ここで言う上位とは規模の大きさとか知名度ではありません.四半期業績,年間業績,ROEなどの成長がずば抜けていて,株価も明らかな上昇を見せている銘柄を指します.更に新商品やサービスを生み出し,変化できない古い企業からシェアを奪っている事も特徴として挙げられます.

こういった銘柄はいわばファーストペンギンであり,それを追随しようとするものよりも圧倒的な利益を出します.そして他の銘柄とは比較にならないほどの株価の上昇を見せます.

 

オニールはこの先導株と出遅株を見分ける方法として,自分が立ち上げた「インベスターズ・ビジネス・デイリー」というサービスでレラティブストレングス指数というものを公開しています.ただし,有料会員にならなければ手に入りません.

日本株ではこのサービスはありませんので僕はこのサービスを利用していません.

 

ただ,この性質を覚えておく事は有益です.マーケットが大きく下落し,次の上昇をしようとする時に,最初に飛び抜けて大きく上昇する銘柄はその後,更に大きな飛躍を遂げる事が多々あります.

こういった銘柄は最初に上昇をした時点では,気後れするほど高い価格に見えます.しかし,後々振り返ってみれば,割高に見えていた時期が最高の買い時だった事がわかります.

マーケットの転換期だと感じた時に,高い銘柄に勇気を持って挑めるか.

オニールの言葉を覚えておけば,そういう場面に出会った時に最後の一押しをしてくれるかもしれません.

 

7.Institutional sponsorship

株価というのは最終的に需給で決まります.つまり,大きな買い需要があれば株価は上がっていきますし,大きな売り需要があれば株価は下がっていきます.

そして,買いにしろ売りにしろ,大きな需要を作り出すのは機関投資家です.

オニールはこの点に注目して優秀な機関投資家が購入している株である事を投資のルールの1つとしています.特に直近の四半期で機関投資家による買いが入った銘柄は要チェックです.

 

このルールを日本株に適用するならば,外国人持ち株比率をみるといいでしょう.

三ヶ月ごとに発売される四季報でもいいですし,証券会社の銘柄情報でもこの比率を見る事ができます.

日本株は海外投資家の動きによって大きく左右されます.2016年の年初から海外投資家が売越しを続けた結果,日本株は大きく下がりました.

ある銘柄に興味を持った時に,その銘柄の外国人持ち株比率を見てみると有益な情報が得られます.時期を追って,この比率が上がっていき,2桁台になるかならないかというところならばいい買い時だと言えます.

またできることならば,毎年発表されるファンドの投資成績を見ておいて,上位10位以内に入っているファンドがどんな銘柄を持っているのか,見ておくのも銘柄選択の大きな手がかりになります.

 

8.Market

最後はマーケットです.どんな銘柄も結局はマーケットの中で泳いでいる事を忘れてはなりません.どんなに力強い動きを示す銘柄でも,マーケットの激流に簡単に飲み込まれてしまう事があります.

これまでに見てきた6つのルール全てを文句なくクリアしている銘柄でさえ,マーケットが下向きの時には思うように上昇してくれません.

 

マーケットのトレンドを見るには,主要な指数(日本で言えば,日経平均TOPIXなど)を毎日いる意外に方法はありません.

マーケットが天井をつけようとする時には先導株が先んじて下落に転じたり,日経平均などの指数が上昇しているにもかかわらず,その出来高が伴っていなかったりします.

陽線の日の出来高は少なく,逆に陰線の日には出来高が増加します.

 

これらの特徴を覚えていても,マーケットの動きを先んじて読むことはとても難しいです.騙しと呼ばれる現象が起きたり,突発的な事故が起きたり,転換期になると恣意的にマーケットを操作しようとする投資体が現れたり,僕自身も今でもマーケットを見極めるのに苦労しています.

このブログで日々更新される内容のほとんどはマーケットの方向性を見極めようとするものです.日々のチャート観察に加えて,是非このブログもマーケットの方向性を見極めるための材料にしてもらえれば嬉しく思います.

 

9.まとめ・僕が実践しているリスト作り

以上のルールを僕は自分の監視リスト作りに生かしています.具体的には下記の通りです.

  1. 証券会社のスクリーニング機能を使って過去の成長率の最低値を設定します.売上が15%,利益が18%です.
  2. 更にROEを15%以上に設定します.
  3. エクセルで一つ一つの銘柄の過去の決算を貼り付けて,直近の四半期ごとの成長率を計算します.
  4. 四半期ごとの業績と過去3年の業績推移が両方とも基準(売上成長15%以上,利益成長18%以上)をクリアしている銘柄を監視リストに入れる

たったこれだけです.

つまり,CAN-SLIMのうち,CAを満たす銘柄を監視リストに入れているということです.スクリーニングの結果は大体200銘柄以内に収まります.最終的に監視リストに入るのは100銘柄あればいい方でしょう.月に1回はスクリーニングをやり直して,リストのアップデートをします.

 

そのリストに載っている銘柄のチャートを日々見て,エントリーポイントになりそうなら,新商品を出しているか,外国人持ち株比率がどうか,同業他社と比べた時に業績の伸び率や株価の上昇率はどうかといったポイントをチェックします.それらの項目を見た後も買いたいと思うようであればエントリーポイントで買います.

 

もし,どんなものを投資対象として検討すればいいかわからないという方がいましたら,まずはこの方法でリストを作ってみてください.

 

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